霊長類研究 Supplement
第33回日本霊長類学会大会
セッションID: B02
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口頭発表
マンドリルとシロエリマンガベイの混群形成と交雑
*本郷 峻中島 啓裕エチエンヌ・アコモ‐オクエミンドンガ‐ンゲレ フレッド・
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抄録

生殖隔離と種分化のメカニズムを考えるうえで,野生動物の交雑に関する情報は重要である。野生霊長類の交雑個体はマカク属,ヒヒ属,グエノン属など同属の種間ではいくつか知られているが,属が異なる種間の場合にはほとんど報告がない。私たちは,初めてマンドリル(Mandrillus sphinx)とシロエリマンガベイ(Cercocebus torquatus)の交雑個体と推定される個体をカメラトラップ映像から確認したので,両種の混群形成のパターンと合わせて報告する。私たちは2012年1月から2014年2月において,ガボン共和国ムカラバ-ドゥドゥ国立公園東部の160ヶ所にカメラトラップを設置した。記録されたビデオ映像から種同定を行った結果,マンドリルとシロエリマンガベイの混群がしばしば観察された。混群のほとんどがマンドリルのヒトリオスとシロエリマンガベイの集団という組み合わせであった。シロエリマンガベイの集団の中に,外見的特徴からマンドリルとの交雑個体であると推定される個体がしばしば撮影された。これらの個体は尾が両種の中間程度の長さであり,鼻面がシロエリマンガベイと比べて長かった。顔部の色はシロエリマンガベイのように黒い個体がほとんどだったが,体毛の色は両種の中間的なパターンを示していた。これらの結果は,マンドリルのヒトリオスがしばしばシロエリマンガベイの群れと混群を形成し,集団内のメスと交尾して繁殖することを強く示唆する。両種は姉妹群ではあるが約500万年前に分岐したと推定されているため交雑個体には繁殖能力がない可能性が高いが,今後遺伝的研究により交雑形成を確認し,その繁殖能力を調べる必要がある。

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© 2017 日本霊長類学会
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