2002 年 49 巻 p. 1281-1285
湿地や干潟は, 多様な景観を与え親水性を高めるのみならず, 沿岸域の生態系維持及び復元, 物質循環の促進に寄与することが, 自然干潟の調査からも解明されつつあるが, 人工的に造成された場については, 造成後の継続的なモニタリング調査が著しく不足している. 本論では, 陸域起源の多量な栄養塩負荷を受ける人工的塩性湿地である南港野鳥園湿地部において, 地域別・季節別の環境特性と, そこに棲息するベントス類の動態を現地調査や室内実験から検討した. これより, 潮通しがよく一定時間干出する場を造成すれば, 底質がやや嫌気的で多くの有機物が堆積しても, 定性的に生物多様性に優れた環境の創出が可能であることが示唆された.