抄録
本研究では, 近年顕在化している有明海の環境変異における重大な要因の一つとして考えられる, 有明海を中心とした領域の気候変動に関して, 地域気象観測 (アメダス) データ・NCEP客観解析データなどを用いて解析を行った.環境悪化に伴う被害が深刻だった2000年は, 有明海ならびに東シナ海において, 夏季モンスーンの発達が平年より弱く太平洋高気圧の勢力下にあり, 日射量が平年よりも10%以上高かったこと, また, 熱帯域での夏季~秋季の降水パターンが, 有明海近海域において10月に平年の2倍以上の大量の降水をもたらしたことが, 地上観測・広域データ双方を解析することによって明らかとなった.