2004年8月に東京湾西岸の横浜港から金沢八景にかけて青潮が発生した. 従来, 西岸での青潮は観測事例がなく, これらの事実は関係者に衝撃を与えると伴に, 東京湾の水質悪化の拡大を意味するものとして懸念された. そこで本研究では, 東京湾の湾央から湾奥を含む多点において水質連続係留観測を実施し, 2004年に発生した全ての青潮について, 発生範囲や湧昇過程を比較した. さらに3次元数値モデルによる2004年夏季の水質再現計算を通して, 青潮発生過程を追跡した. その結果2004年に東京湾の西岸で発生した青潮の主要因は, 強い南風の長期に及ぶ連吹, 黒潮蛇行, 成層強度など, 湧昇が発生しやすい条件が重なったことが原因と考えられた.