2005 年 12 巻 p. 55-70
本研究は, 社会基盤整備における合意形成を支援するための新たなマネジメント手法を提案すること目的とする. 近年, 社会基盤整備の必要性やその計画の是非をめぐる市民と事業者の対立は社会的関心を呼び, 住民関与を規定する法制度整備が進んでいる. しかし, 現行法制度をもって社会基盤整備における住民関与や合意形成に関する制度資本が十分整ったとは言い難い. 本研究では, 合意形成支援のための技術的手法として, インセンティブマネジメントを開発した. 著者の先行研究にて構築したドラマ理論を適用した合意形成モデルを用い, ダイナミックに変化する現場状況や制約条件の基で目標シナリオにアプローチするためのインセンティブを継続的にマネジメントする手法である. その構築プロセスにおける事例研究の結果, 本マネジメント手法の適用可能性が事業特性の異なる2つの道路事業に関して示された.