建設マネジメント研究論文集
Online ISSN : 1884-8311
ISSN-L : 1884-8311
タイ国におけるBOT方式による交通インフラプロジェクトのリスクについて
Jiradech YINGSUTTHIPUN湊 隆幸
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1998 年 6 巻 p. 163-172

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抄録

本研究は, タイ国におけるインフラ整備事業の中でBOT方式による交通施設建設におけるリスクの抽出を行ったものである. 本研究の特徴は, 1) タイ国に特有の政治, 社会および経済状況から発生するリスク要因に着目した点, 2) BOTの各建設段階 (phase) ごとに, 様々な問題を誘発するような「素因」(source risks) の抽出を行った点, および 3) 素因とそれから発生する帰結 (consequence) の関係を, BOT事業の専門家および経験者の知識によりモデル化した点, にある.
研究の結果, タイ国で民活事業を行う場合, 問題を誘発する素因として, 1) 頻繁な政府の交替による政策・規準の変更, 2) 政治家の各建設段階での意思決定への介入, 3) 複雑で時間のかかる許認可プロセス, 4) 特に, 交通施設の場合, タイ国民の交通手段に対する選好, に留意することが重要であることが示された.
BOT方式は, タイ国を始めとするアジア諸国で, 民間の技術力や資金調達力を “公共工事” に導入できる手段として, 国家予算不足を補う方法として導入がなされてきた。本研究は, タイ国を例として, BOT事業のホスト国の政治社会状況を中心としたマクロ的なリスクの関連を構造化した. その結果は, 本国内だけでなく, 海外の投資家のBOTリスクに対する知識の向上に貢献できるものであると考えられる.

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© 社団法人 土木学会
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