2000 年 8 巻 p. 227-238
我が国が直面している問題には様々なものがあるが, 最近よく言われていることの1つに公共事業などのインフラ政策問題が挙げられる. これまでのやり方では多くの矛盾が生じ始めておりこういった事に関する議論があるのは当然のことである. またもう1つのキーワードとして経済性の良いもの, もしくはコスト的に無駄の無いものが求められてきている. しかも, 今後さらにこの傾向が強くなっていくであろう事は, 誰もが予想できることである. したがってこれから建設される構造物には, いかに安全でしかも経済性に優れているものがより求められるのは当然である. また, 我が国の現状を考えると構造物を維持・補修によって出来るだけ長く使用することがインフラの充実という観点から重要である. それにはある程度の予測と検討がたいへん重要になってくる.
本研究では, 構造物の維持補修に関した劣化状況をモデル化し, 総期待費用最小化原則に基づき最適な初期安全性レベルとその時の構造物のライフサイクルコストを求めようとするものである. その場合の最適なライフサイクルコストの設定に関して構造物が繰り返し荷重を受けるモデルを想定している。