世界自然遺産候補地となっている鹿児島県奄美群島の奄美大島と徳之島の原生的照葉樹林において,毎木調査区を用いた植生調査をおこなった.本報告書では,このうち,奄美大島西部の標高400 mと600 mに設定した2つの1ヘクタールの毎木調査区の概要について,奄美大島中部(標高330 m)の既存の1ヘクタール調査区と比較しながら報告した.調査対象樹木の下限直径は4.8 cmである.本研究の2調査区はスダジイ・イジュの優占度が低く,イスノキ・ウラジロガシ等の優占度が高いことから,遷移がより進んだ状態にあるとみなせた.3つの1ヘクタール調査区の間に見られる変異は,標高・地形・撹乱の程度などにより説明されると考えられた.また,奄美大島・徳之島の植生調査区の周辺で,カメラトラップによる動物調査もおこなった.その結果,両島の山地に残された原生的照葉樹林は,多くの固有種を含む哺乳類・鳥類の生息場所となっていることが示された.