自然保護助成基金助成成果報告書
Online ISSN : 2189-7727
Print ISSN : 2432-0943
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
シカの増加がもたらす湿原生態系への直接・間接効果の把握と影響緩和のための方策の検討 ―水上シカ調査会―
中島 啓裕橋詰 茜矢島 豪太高橋 慶伍黒瀬 弘毅寺田 佐恵子
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2020 年 28 巻 p. 88-97

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抄録

群馬県利根郡みなかみ町に位置する武尊田代地域には,多量の降雪がおもな涵養源となる湿原が点在している.しかし,近年のニホンジカの侵入・増加に伴い,湿地生態系に変化が生じつつある.本研究では,湿地の周りに自動撮影カメラを設置し,シカの個体数密度とその変動を明らかにする体制を整えた.また,シカ排除柵を設置し,シカが湿地生態系にもたらす影響を定量的に評価した.さらに,両者の結果から,希少植物保護のための方策を確立することを試みた.自動撮影カメラのデータから,平均的な密度は低いものの,比較的大きな月変動がみられることが分かった.6月から7月に個体数密度が高くなるのに対し,8月から10月には低密度になった.こうした変動は,より広域での移動パターンによるものと考えられる.湿地生態系への影響もシカの密度変動に対応しており,初夏には湿地のスゲ属への影響がとくに顕著であったが,夏以降は大きく軽減された.これらの結果から,湿地の希少植物の保護のためには,シカが高密度化する時期に簡易的な排除柵を設置することが影響緩和策として有効であると考えられた.

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© 2020 本論文著者
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