本調査の目的は,沖縄本島に生息するヤンバルホオヒゲコウモリとリュウキュウテングコウモリの保護に関する生態を解明することであった.2017年秋季から2018年夏季に計6回,人工的に作成したコウモリのソーシャルコールを音響ルアーとして利用し,捕獲調査を行った.リュウキュウテングコウモリに対しては,音響ルアーは捕獲率を上げたが,その有効率は季節によった.ヤンバルホオヒゲコウモリの捕獲を,沖縄本島では,22年ぶりに報告した.捕獲に際して音響ルアーを用いたが,その効果は不明である.さらに,コウモリにとってねぐらは重要な生息地であるため,発信機をコウモリに装着し,ねぐらを確認した.リュウキュウテングコウモリは木の葉,シダ類,樹洞を含む様々な種類のねぐらを利用し,ヤンバルホオヒゲコウモリは主に樹洞を利用している.沖縄本島ではヤンバルホオヒゲコウモリはリュウキュウテングコウモリより分布域が限られている可能性がある.これらの対象種の生態情報を解明,さらに保護計画を策定するためにさらなる研究が必要である.