自然保護助成基金助成成果報告書
Online ISSN : 2189-7727
Print ISSN : 2432-0943
第28期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 特定テーマ助成
シカの影響に関する植生モニタリング調査と地域の生物多様性保全研究 ―シカと植生のアンケート調査(2018~2019)報告― ―地域の植生と生物多様性保全研究グループ―
前迫 ゆり幸田 良介比嘉 基紀松村 俊和津田 智西脇 亜也川西 基博吉川 正人若松 伸彦冨士田 裕子井田 秀行永松 大
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2020 年 29 巻 p. 14-26

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抄録

2017から2019年に実施されたシカと植生に関するアンケート調査でN=962の回答が得られた.北は北海道知床半島から,南は鹿児島県屋久島まで,また,植生的には海岸植生から高山植生まで,森林から湿地,ササ草原など,日本の代表的植生から多くの調査データが集約された.その結果,2008-2009調査に比して,シカの植生に対する影響が進行していることが示唆された.5kmメッシュの区画数による影響度評価(N=669:5kmメッシュ)は,シカによる植生への影響が「激甚」7.0%,「強」21.1%,「中」16.7%,「軽」16.0%,「なし」39.2%であった.一方,2009調査ではそれぞれ6.5%,13.7%,11.6%,15.9%,52.3%であったことから,「強」と「中」の比率が増加傾向を示した.さらに,かつてシカのインパクトは太平洋側に集中していたが,2019調査では,より内陸部側や日本海に近い地域でもシカによる影響が報告され,シカによるインパクトの変化と林床植生における多様性の劣化傾向が顕著に示された.

本研究は,シカによる植生への影響およびその保全を考えるうえにおいて,重要なマイルストーンとしての役割を果たした.

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© 2020 本論文著者
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