岐阜県ではカモシカの被害対策として個体数調整が行われる一方で,罠による錯誤捕獲も頻発している.カモシカの地域個体群を保護する上では,最小限の捕獲計画や錯誤捕獲の回避が必要である.そこで本研究は,被害実態の解明,誘引餌による錯誤捕獲の回避法を検討することを目的とした.
捕獲後,被害地におけるカモシカ再出没までの期間は最長で3か月であり,シカも被害地に出没していた.また,カモシカの出没頻度は,ヒノキ新芽萌出時期以降に増加する傾向が認められた.さらに,カモシカは誘引地点にあまり出没せず,シカやイノシシ,タヌキが誘引地点を夜間に集中的に利用していた.
以上の結果,被害が捕獲後も継続する理由として,被害の集中発生時期まで捕獲効果が十分に持続していない点,シカによる食害も存在する点が考えられた.また,誘引餌を獣道以外に設置し,他種を誘引することで,カモシカの錯誤捕獲を回避できる可能性がある.