2020 年 29 巻 p. 61-71
愛知県奥三河地域でもニホンジカ(以下,シカ)の増加に伴い,農林業被害だけでなく希少種の減少など植生への影響が懸念されている.筆者らは先行研究でシカがどこで捕獲しやすいかという「シカ出現予測モデル」を開発した.現在運用中の予測モデルは主にGPS首輪データから構築したが,適用範囲がGPS首輪データのある地域に限られる点,予想単位が250mメッシュと広範囲な点が問題であった.そこで,今回新たに地域住民や行政職員等から寄せられたシカ目撃情報と無人航空機による航空写真情報を組み込むことを検討した.その結果,シカ目撃情報を加えることでモデルの改善効果が認められた.また,250mメッシュ内のどこでシカが滞在する確率が高いか明らかにするため,GPS首輪データでシカの滞在頻度の異なる地点で,地上レーザースキャナを用いた立地環境調査をした.その結果,立木密度が低く下層植生の豊富な場所でシカ滞在確率の高いことが示された.
本成果は公開中のシカ出現予測アプリ「やるシカない!」に組み込むことで,行政・研究者・地域住民等から引き続き情報収集を行いながら更新を続け,被害対策につなげていきたい.