本研究グループは,将来的な諫早湾の常時開門を見据えて,有明海全域の底生動物分布の現状を明らかにするとともに,それらのデータを常時開門後に実施される生態系影響解析への比較対象とすることを目的としている.今年度は,1997年4月の潮止め前から毎年欠かさずモニタリングをしてきた諫早湾干拓調整池16定点と有明海奥部海域50定点の採泥調査に加えて,5年に1回のペースで過去4回行ってきた有明海全域106定点の採泥調査を実施した.さらに,前年度2019年6月に有明海奥部50定点で採集した生物試料のソーティング作業を完成させ,過去23年間の調査データをまとめて8編の学術論文・報告として公表した.日本ベントス学会自然環境保全委員会は,これらの論文を引用することで,2020年6月に福岡高等裁判所に対して「諫早湾干拓事業の常時開門確定判決無効化の見直しを求める要望書」を提出した.