日本古生物学會報告・紀事
Online ISSN : 2186-0955
Print ISSN : 0031-0204
ISSN-L : 0031-0204
43. 本邦新第三紀貝化石 (第1報)
金原 均二
著者情報
ジャーナル フリー

1937 年 1937 巻 8 号 p. 114-119_1

詳細
抄録

地質調査所の所藏する標本の中の數種を選んで記載を試みた。
1) Melongena sazanami (新種)
技師佐藤源郎學士は「高梁」圖幅地質調査に際し多くの新第三紀貝化石を採集せられた。蒐むる所悉く植月津山兩統に屬する地層からである。中國地方新第三紀層の一般たる周知の如くVicarya callosa JENKINSを伴へる暖海性動物群を含める事であるが, 茲に記載するメロンゲナも亦その分布は「印度-太平洋區域」に限つて産する暖海屬である。佐藤學士によつて獲られた此新種は特徴ある漣状の縲状彫刻を具へ, ジャブの始新統より産する1種に近似する。
2) Turritella (Haustator) sakakurai (新種)
眞岡統の長島貝殻層及び布禮頁岩層は北海道の幌内統及び常磐の淺貝砂岩に對比され得る動物群を含むが, 荒貝噴倒岩層をへだてて上位にある本斗統の最下部たる八眺嶺硬質頁岩層は一般に化石に乏しい。三菱鑛業の坂倉勝彦學士は南樺太南名好川上流からTurritellaの1種を本硬質頁岩層から採集せられて筆者に贈られた。之を檢するに縲塔極めて秀でた特異な1種である。類似した種若しくは近縁の種は我國からは未だその産出を聞かない。
3) Cuspidaria (Cardiomya) makiyamai (新種)
東大地質教室に槇山教授採集によるCuspidariaが保存せられてある。常磐地方によく發達する淺貝砂岩層より産した化石で, 亜屬Cardiomyaに屬する。Cardiomyaは米國加州の始新統に甚だ多く發見されるのは注意を惹くが, 更に注意すべきはジャマイカ (Jamaica) の漸新統より産するCuspidaria. craspedonica DALLに酷似する事である。

著者関連情報
© 日本古生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top