平和研究
Online ISSN : 2436-1054
依頼論文
3 民主主義と国際社会の動揺——パンデミックの衝撃
竹中 千春
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 p. 57-84

詳細
抄録

パンデミックには、1990年代以降のグローバリゼーションのしくみが深く関わっている。2000年代には「9・11事件」と対テロ戦争、リーマンショックと世界金融危機、グローバルな市民運動、ジェノサイドや人権侵害、難民や移民の波、気候変動などが世界的衝撃を与えたが、2010年代後半にはグローバリゼーションの負の影響を批判する反グローバリズム運動が広がった。本稿では、自由主義的国際秩序の動揺する今日、国際社会を構成する国家のモデルとして、ドイツやEU諸国などの現状維持国家、ネオリベラル・ナショナリストの勝利したイギリスやアメリカとインド・フィリピン・トルコ・ブラジルなどのイリベラル・デモクラシー、東アジアの「開発主義国家」、「中国モデル」と称される中国、軍事大国ロシアを挙げ、各国がパンデミックにどう対応したかを比較分析する。2021年前半現在、「中国モデル」や東アジアの「開発主義国家」の成功の影で、トランプ政権を経験したアメリカやBREXIT内閣のイギリスを含め、G7諸国は感染抑止に苦闘しており、強権的な政権下の中進国やロシアも厳しい状況を抱えている。逆に、ニュージーランド、デンマーク、アイスランド、台湾など、女性リーダーの動かす社会民主主義的な先進諸国の成果は高く評価された。自らの国家や国際社会は「人間の安全保障」を守るか。市民の視点からの「公衆衛生政治」が求められている。

著者関連情報
© 2021 日本平和学会
前の記事 次の記事
feedback
Top