「1980年代の沖縄-平和と自立、内発的発展の展望」をテーマとして1979年に沖縄で開催された日本平和学会研究大会において、沖縄の報告者たちは、沖縄の民衆への視点が欠落した、沖縄不在の議論を行う本土側のオピニオン・リーダーたちを痛烈に批判した。平和学会はこの批判を受け止め、沖縄ローカルの視点を尊重した議論を行うことで、「自立」概念の深化を成し遂げた。にもかかわらず沖縄の政治的現実が変わっていないのは、自立と平和が無条件に結びつけられてしまっているからだ。そこで本稿では、沖縄に「平和」を実現するためには、どのような「自立」が求められるのか考察を進めた。
まず沖縄が「決定権限なき決定者」であることを、普天間基地移設問題の経緯を振り返ることで明らかにし、そのことが沖縄県民の間に一定の「あきらめ」を生んでいることを、県民意識調査の結果から示した。しかも日本社会の多数派が、沖縄を「決定権限なき決定者」にさせてきた日本政府の姿勢を容認しており、沖縄と本土の溝が広がっていること、そしてこれらの背景に新自由主義的価値観の蔓延と、その結果としての民主主義の機能不全があることを示した。
この状況を打開するためには、沖縄の声を政治に反映させるための体制をつくりあげなければならず、そのためには新自由主義を押し進めてきた企業家や官僚、政治家などのテクノクラートたちに抗い続けることが必要である。それは日本社会の、そしてオピニオン・リーダーたちの集まる日本平和学会の責務である。