抄録
プラスチック射出成形分野において、金型キャビティ面を樹脂の融点あるいはガラス転移点温度以上に加熱して、樹脂の固化を遅らせ、ウェルドラインの抑止や転写性の向上をはかる加熱・冷却成形法が実用化されている。しかし、従来の加熱・冷却成形法では、設備コストが高いこと、複雑な構造の金型が必要となることが問題となっていた。そこで、著者らは、パネル型遠赤外線ヒータの輻射熱を利用して、低コストでかつ簡易的にキャビティ面を加熱できる金型を提案し、その評価を行ってきた。本報告では、浅い箱形成形品に適用できる金型を新たに設計・製作し、耐衝撃性ポリスチレンを用いた成形実験を通じて、本金型により、フローマークやシルバーストリークなどの成形不良の抑止と、キャビティ面の転写性の改善がはかれることを明らかにした。