抄録
若年性特発性関節炎にステロイドミオパチーを合併した腰椎椎間板ヘルニア術後症例において,術後早期における回復経過を定量的に把握し,理学療法の効果を高めるために,慣性センサを用いて立ち上がり及び歩行動作を評価した。慣性センサは第3腰椎棘突起レベルに装着し,各動作について,術後4日目と11日目に計測を行なった。健常女性1名と比較した結果,立ち上がり動作において加速度鉛直成分及び角速度前方・後方回転成分において差を認め,術後11日目には角速度の後方回転において,健常女性の波形に近似する傾向を認めた。これらの定量的評価を用いながら理学療法を行なった結果,疼痛や筋力,歩行速度といった身体機能に変化を認めなかったが,SPPBの立ち上がり動作項目において1分以内に5回立ち上がりが可能となった。今回,術後11日という比較的短期間で自宅退院に繋げることができたが,その一因として慣性センサによる動作の定量的評価とフィードバックによる治療アドヒアランスの向上が寄与したものと考えた。