抄録
本研究の目的は,当院で経カテーテル的大動脈弁留置術を実施された高齢大動脈弁狭窄症患者の術前特性について検討することである。対象は,術前に理学療法評価が可能であった106名(中央値86歳,四分位範囲84–90)とした。カルテより患者背景因子,血液生化学検査,心エコー図検査,呼吸機能検査などの各種データを収集し,術前に理学療法士が身体機能,認知機能,フレイル,体組成を評価した。また手術・麻酔時間,術後の離床進行日数(座位・立位・歩行を開始した日),在院日数,入院関連機能低下の有無などを算出し,更に性差があるかを検証した。対象の70%は女性であり,術前の日常生活動作や身体機能,フレイル評価は女性が低かったが,体組成における位相角に有意差を認めなかった。また全体の47%に入院関連機能低下を生じていた。術前後の理学療法介入については,患者特性を十分に理解した上で,個別的な対応が望まれると考えられた。