関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 17
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骨・関節系
骨盤肢位の違いが肩甲骨周囲筋に及ぼす影響
*鈴木  淑実黒川 純高村 隆岡田 亨
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抄録

【はじめに】近年、姿勢の変化が肩関節に及ぼす影響についての報告がされている。また、臨床の治療場面においても肩甲胸郭関節や姿勢などを考慮してアプローチを行なっている。そこで、我々は骨盤中間位と後傾位での姿勢の違いが、肩挙上時の肩甲骨周囲筋へ及ぼす影響について筋電図学的に検討した。
【方法】対象は本研究に同意を得た、肩関節に既往のない健常人男性17名(平均年齢29.1±3.5歳、身長171.4±5.2cm、体重66.8±7.1kg)、利き手側(全て右側)17肢とした。測定肢位は2種類とし、骨盤中間位(上前腸骨棘-上後腸骨棘間2横指)を座位a、骨盤後傾位(60°の傾斜板に仙骨部を接地させた座位)を座位bとした。また、両肢位ともに足底接地座位、前額面上で脊椎が床面と垂直になるよう設定した。測定動作は、肘伸展位、前腕中間位にて肩甲骨面上、両側同時自動挙上を行い90°、120°でそれぞれ5秒間の保持を3回行なった。また、基本軸を体幹側面中央線、移動軸を上腕骨と規定し、各角度ごとに目標物を設置、保持を行なった。測定機器は、Noraxon社製表面筋電図Myosystem1400を使用し、測定筋は僧帽筋上部線維、下部線維、前鋸筋とし十分な皮膚処理後、電極を貼付した。解析区間は挙上位保持5秒間の内、中間3秒間とし各筋の平均活動を算出したのち3回の平均値を求めた。3回の平均値をDanielsらのMMT3の動作遂行時の筋活動を基準として標準化した(%Refference Voluntary Contraction:%RVC)。統計処理は、90°、120°各挙上角度における骨盤中間位と後傾位の筋活動を対応のあるT検定、Wilcoxonの符号付順位検定を用いた。
【結果】90°挙上位での僧帽筋下部線維の筋活動では、骨盤中間位より後傾位が有意に高値を示した(p<0.01)。120°挙上位での僧帽筋上部・下部線維の筋活動では、骨盤中間位より後傾位が有意に高値を示した(p<0.01)。90°挙上位での僧帽筋上部線維、前鋸筋の筋活動及び、120°挙上位での前鋸筋の筋活動に有意差はみられなかった。
【考察】肩甲骨面挙上時の肩甲骨に対し、僧帽筋上部線維は挙上、下部線維は下制、前鋸筋は外転へ作用し、共同して上方回旋へ働く。今回の結果より、骨盤肢位の違いが肩甲骨面挙上における肩甲骨上方回旋の筋活動へ影響する事が示唆された。よって臨床上においても骨盤の肢位を考慮し、評価、治療を行なう必要があると考える。

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© 2007 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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