関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 6
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口述発表1(神経系)
維持期脳卒中片麻痺に対する自主運動プログラムの効果
通所リハビリテーションでの検討
*矢口 拓宇冬木 華代
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抄録

【目的】CarrおよびShepherdは練習量を増やすためには1対1のセラピーだけでは限界があるとし集団でのサーキットクラスやグループトレーニングのモデルを提案している。当通所リハビリでは個別リハビリに加え監視下で個別の運動課題を次々に行わせる自主運動プログラムを実施している。本研究はプログラムを5ヵ月間実施し、片麻痺を有する利用者の身体機能への効果を検討するものである。
【方法】対象は維持期脳卒中片麻痺を有し5ヵ月間プログラムを実施できた20名(男性11名、女性9名、平均年齢72.5±8.9)で、本研究の意図を説明し同意の得られた者とした。疾患は脳梗塞10名、脳出血8名、クモ膜下出血1名、脳挫傷1名で、麻痺側は右が11名、左が9名であった。利用回数は週1回が7名、週2回が12名、週3回が1名であった。要支援が10名、要介護が10名であった。プログラムは45分間の集団体操および45分間で個別の運動課題を監視下で数名同時に行わせるものとした。個別の運動の内容は安全性に配慮し自転車エルゴメーターや段差昇降、平行棒内歩行、座位前方リーチ課題などを組み合わせて作成した。関節可動域練習など徒手が必要な部分にはセラピストが介入した。体調に合わせて適宜休憩をとらせた。効果の検討には非麻痺側握力、非麻痺側下肢筋力、30秒間立ち上がり回数、座位Functional reach test(以下座位FRT)、Timed up and go test(以下TUG)を測定した。また、1カ月間の転倒回数および転倒しないで室内を歩ける自信についても聴取した。統計処理はT検討及びwilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】本研究の結果、座位FRT(平均36.3±9.0cmから平均44.2±10.1cm)、TUG(平均22.1±12.3秒から平均20.5±10.7秒)において有意差が認められた。他の項目においても改善傾向はあったものの、有意差はなかった。
【考察】寺垣らは座位FRTは体幹機能の指標となると述べている。TUGは歩行中のバランスの指標であり、転倒と相関があるとされている。本プログラムにより体幹機能や歩行に関するバランス能力を強化することができ、転倒予防に効果が期待できると考えられる。その他の項目に関しては5ヵ月間では明らかな変化を得ることが難しく、期間の検討が必要である。
【まとめ】通所リハビリにおける自主運動プログラムにより座位FRT及びTUGにおいて有意な改善が認められ、本プログラムが転倒予防に有効である可能性が示唆された。

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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