関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 23
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口述発表3(骨・関節系)
内側型変形性膝関節症における股関節回旋全可動域とFTAの関連性
*安永 佳世内城 麻理子磯谷 隆介吉田 研大国 央志丸山 公遠藤 一
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抄録

【目的】  臨床上,内側型変形性膝関節症(以下膝OA)は膝関節だけでなく股関節に可動域制限を呈していることが多い.古賀.2007らは,膝OAの進行に伴い股関節内旋可動域制限が生じ,それがFemuro-Tibial Angle (以下FTA)との関連性があると述べている.しかし,股関節回旋全可動域(以下運動域)とFTAの関連については検証されていない.動作時において,股関節は基本肢位からの内旋もしくは外旋といった一方向の運動ではなく,水平面上の全可動域での運動と考えられる.そこで本研究は,股関節回旋運動域とFTAの関連性について検証する. 【方法】  対象は当院を受診した下肢の手術既往のない女性の膝OA患者40症例80膝(年齢74.1±7.6歳)とした.計測は腹臥位にて股関節内外旋を3回計測し平均値とした.また立位膝関節正面X線撮影を行い,FTAを計測した.本研究では股関節回旋参考可動域(Nancy Berry man.ら2005)を内旋22°,外旋32°,運動域54°と定義し,この運動域の中間を正常運動中心外旋5°とした.この運動域より過大または低下,正常運動域中心より内外旋低下を分類し,運動域過大-内旋低下(以下A群),運動域過大-外旋低下(以下B群),運動域低下-内旋低下(以下C群),運動域低下-外旋低下(以下D群)の4群とした.FTAの差の検定は,各群間のデータをランダムサンプリングし多重比較検定(Tukey Kramer法)を用い,有意水準は5%未満とした. 【結果】  FTAの結果はA群(n=15)182.5±5.6,B群(n=40)178.5±4.5,C群(n=13)181.8±4.3,D群(n=12)179.0±4.2となった.A-B,B-C群間の2群間で有意差が認められた(p<0.05).その他の群間では有意差は認められなかった. 【考察】  A-B,B-C群間より,運動域の大小に関わらず,股関節内旋可動域低下は先行研究と一致するものでありFTA増大の関連が示された.股関節内旋可動域低下は,股関節による水平面上の運動を相対的に下腿内旋で補うことにより外側スラストが生じ,FTA増大に影響すると考えられる.B群より運動域が大きく,外旋可動域が低下した場合,FTAは正常値と近似する.そのため,運動域中心が内旋方向に傾くことにより,内旋方向への運動量が増大し,FTAが減少したと考えられる.
今後,膝OAの理学療法を行う上で,股関節内旋可動域低下の要因を追及し,内旋可動域を改善することは有用な治療アプローチだと考えられる.

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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