関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 239
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口述発表38(小児発達支援系)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の立位訓練に関する調査および分析
*岩田 恭幸坂元 千佳子吉田 みちる小林 庸子(MD)山本 敏之(MD)小牧 宏文(MD)
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抄録
【目的】デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下DMD)児の立位訓練は,各施設で多く行われているが我が国では有効性が確立されていない.一方英国では,立位訓練について10年間の追跡調査が行われ有効性が示されている.Galasko(1995)は93人のDMD児に対し10年間毎日・2時間以上の立位訓練を行い,呼吸機能向上と側弯の進行遅延を証明している.Kinali(2007)は123人のDMD児を10年間追跡し,立位維持による側弯の発生遅延と重症度の軽減を証明している.今回,当院で実施している立位訓練に関して実態調査を行い,今後どのように立位訓練を実施していくことが必要であるかを検討した.
【方法】当院外来通院DMD児で自宅にて立位訓練の実施経験のある者27名.9~26歳(平均年齢16±5歳).記入式のアンケート調査を実施した.アンケート項目は,立位訓練の開始時期,実施頻度・時間,訓練の継続・中止,立位訓練中止理由とした.
【結果】立位訓練開始時期は,10歳(32%)、頻度は,毎日(50%)、施時間は,30分(36%)が最も多くなっていた.訓練の継続・中止と年齢は, 13歳以上では,ほとんどの症例が中止し,継続できていたのは2名(17歳1名,24歳1名)のみであった.立位訓練中止理由については,立位保持が出来ないが62%と最も多く,その内訳として介助者が立位をとらせられない,体幹が崩れる,立位台にのせる介助の問題が挙げられた.次に疼痛の発生と装具装着不可能がそれぞれ19% であった.疼痛は主に足関節に起こっていた.装具装着不可能の理由としては関節の変形,成長,装着介助困難が挙げられた. 起立訓練を長期継続できている症例2人(8年と14年継続)の共通点は,実施頻度が毎日または週3日,実施時間は60分以上,介助軽減のため立位保持装置を作成していることであった.
【考察】立位訓練を長期継続するため,立位介助困難,足関節の疼痛,成長と変形による装具装着困難の三つの中止理由に対して対応を考えた.立位介助困難に対しては,介助量を軽減する油圧や電動を利用する,立位保持装置の工夫が必要である.足関節の疼痛については,内反尖足により足部に負荷が集中することで生じると考えられる.従って,変形予防のため早期から,高頻度・長時間の立位訓練を行うことが望ましい.長期継続症例では,毎日または週3日,60分以上,実施したことで拘縮の発生を予防できたと考えられる.他研究においても,1日2時間以上の実施が有効であったという結果があり, 長時間の実施が望ましい.変形がある場合については,他研究では足部を免荷した坐骨支持型長下肢装具が使用されている.装具装着困難に関しては,成長に伴う装具の適合チェックと調整を頻回に実施していく必要がある.
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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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