関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 3
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口述発表1(神経系)
脳卒中急性期リハビリテーションにおける深部静脈血栓症の影響
*小須田  恵美大塚 功熊? 博司山? 慎也原 ?美北澤  和夫
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抄録

【目的】 深部静脈血栓症(以下DVT)は脳卒中患者の合併症の一つにあげられ、その予防と適正な対応、処置が求められる。予防の一つとして早期離床が推奨されるが、リハビリテーション(以下リハ)を進める上でDVT予防は重要なリスク管理の一つといえる。一度DVTを発症すると、急性期リハに大きな阻害因子となる。今回我々は、脳卒中急性期におけるDVTの発症頻度、発生要因および急性期リハへの影響について調査した。 【方法】 2009年1月~12月までに当院に入院した急性期脳卒中患者585例(脳梗塞382例、脳出血131例、くも膜下出血52例)を対象に、DVTを発症した患者の性別、既往歴、病前mRS、脳卒中病型分類、発症時上田式12段階片麻痺テストによる下肢グレード、脳卒中発症後から離床開始までの期間、DVT発症肢・部位、治療、DVT発症後から離床開始までの期間と、DVTが疑われた要因について電子カルテ上より後方視的に調査した。 【結果】 対象患者のうち、DVTを発症したのは3例で全て女性であった。発症患者のうち1例では急性肺血栓塞栓症を認めた。脳卒中病型分類では脳出血2例、脳梗塞1例であった。病前mRSは3~4であった。DVTが疑われた要因は、下肢浮腫2例、奇異性塞栓症疑いによる精査1例であった。発症肢は左下肢2例、右下肢1例であった。うち麻痺側下肢発症は2例、上田式12段階片麻痺テスト10、12であった。脳卒中発症後より離床開始になるまでの期間は3例とも3日以上経過していた。DVTを発症後の安静臥床期間は2例は当日より離床開始、1例は他の合併症により9日後からの離床開始であった。 【考察】 当院における急性期脳卒中患者のDVT合併率は0.5%であり比較的低いことがわかった。これは、推奨予防法の早期離床実施が影響しているものと考えられる。また、DVT危険因子である下肢麻痺は今回の結果では重症度の影響は低く、むしろ病前mRSが低く、歩行能力やADLに制限があるものにDVTを認める傾向にあった。DVT発症後はリスク管理下にて治療とリハを平行し行うリハ基準により、離床への影響は少ないと考えられた。 【まとめ】 急性期脳卒中患者のDVT合併症例について調査した。危険因子としては女性、病前のADL制限があげられ、合併率は約0.5%であった。理学療法士は急性期リハを安全に実施するためにDVTの発症の危険因子について情報収集と評価を行ない、適切なリスク管理を行なうことが求められる。

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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