関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 45
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口述発表5(生活環境支援系)
Critical illness polyneuropathyに対する早期理学療法の経験
*戸渡 敏之松本 潔須貝 章弘
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抄録

【はじめに】ICUなどで集中治療が必要な重症患者に弛緩性の麻痺がみられ、ADLなどリハ的な予後を阻害する疾患の一つとして、Critical illness polyneuropathy(CIP)があげられる。その特徴として、敗血症や多臓器不全(MOF)で人工呼吸器管理となった重症患者に発症する一次性軸索変性によるpolyneuropathyと報告されている。現時点では、CIPに対する特異的な対処法はなく、原疾患の治療と早期リハとされているが積極的な急性期リハ実施例の報告は少ない。
 そこで今回、人工呼吸器装着中にCIPの合併を疑い理学療法(PT)を実施する機会を得たので報告する。
【症例】趣旨を説明し書面による同意を得た40代男性
【現病歴】独歩可能で就労中であったが視神経脊髄炎の入院治療中に無顆粒球症を併発し、敗血症、DIC、MOFとなりエンドトキシン吸着療法、CHDFなどの治療をおこなった。同時に呼吸状態の悪化を認め人工呼吸器管理となり、呼吸理学療法目的にてPT開始となった。
【PT評価】開始時は人工呼吸器管理下で、セデーション中であった。また四肢に軽度のROM制限があり腱反射は減弱~消失していた。PT開始から8日目に意識レベル軽度改善したが、弛緩性の四肢麻痺を呈しておりCIPの合併を疑った。その後の神経伝導検査で運動神経、感覚神経の振幅低下と導出不良を認めた。
【経過】依頼日より体位ドレナージとsqueezingを行い、PT開始から12日目にweaning可能となるが、四肢遠位筋は萎縮していた。またROMは足関節背屈に軽度制限を認め、MMTは両足関節0~1レベル、握力は両側0kg、ADLは全介助であった。19日目にOT追加となり、徐々に車椅子動作も向上し、69日目に院内移動は車椅子で自立となった。その後麻痺の回復に伴い歩行能力も向上し、108日目はロフストランド杖歩行自立、138日目にMMT:両足関節4レベル、握力:右18kg、左23kgまで改善し独歩(FIM:126)にて自宅退院となった。
【考察】リハを実施したCIP患者のADL的予後は、良好なケースもあるが、麻痺が残存した症例や歩行に下肢装具が必要となった報告もあり、一定の傾向を認めていない。またリハ開始時期も多くは抜管後からのケースであり急性期からの介入報告例は少ない。特に本症例は人工呼吸器管理下からCIPの合併を疑い、早期に医師やOT、Nsとカンファレンスで情報を共有し、麻痺や身体機能の回復に応じたアプローチが可能であったことが良好な結果を得た要因の一つであると示唆された。

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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