関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 4
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口述発表1(神経系)
麻痺側下肢の随意運動が可能な高齢脳卒中片麻痺患者のベッド-車椅子間の移乗動作自立度に影響を及ぼす要因の検討
-麻痺側脚伸展筋力に着目して-
*布施 直樹大木 雄一
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抄録

【目的】脳卒中片麻痺の移乗動作自立度に影響を及ぼす要因の一つに、非麻痺側下肢筋力があるが、麻痺側下肢筋力に着目した研究は少ない.麻痺側下肢の随意運動が可能な脳卒中片麻痺患者にとり、麻痺側下肢筋力は非麻痺側下肢筋力と同様に移乗動作遂行時に重要な役割を果たすものと考える.本研究の目的は、麻痺側下肢の随意運動が可能な脳卒中片麻痺患者の移乗動作自立度に麻痺側下肢筋力が及ぼす影響について検討することである.
【方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟に入院し、初発かつ65歳以上の脳卒中片麻痺20例(男性12名、女性8名.平均年齢75.4±6.4歳).麻痺側下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下麻痺側下肢BRS)3以上で、ストレングスエルゴメーター(三菱電機エンジニアリング社製StrengthErgo240以下SE)による麻痺側・非麻痺側脚伸展筋力が測定可能な患者とした.SEによる脚伸展筋力の測定方法が理解困難な者、重篤な整形外科疾患を有する者は除外した.対象者の属性として、発症日から入院日までの日数、年齢、性別、体重、麻痺側を調べ、身体機能及び動作能力として、麻痺側下肢BRS 、体幹垂直性及び腹筋力(Stroke Impairment Assessment Set、以下SIASを用いて評価)、麻痺側・非麻痺側脚伸展筋力、Functional Independence Measure(以下FIM)移乗動作項目を評価した.麻痺側・非麻痺側脚伸展筋力はペダル回転数20回転/分、測定回転数3回転で1回の施行を行い、ピークトルク値を体重で除した値を脚伸展筋力とした.分析はFIM移乗動作項目5点以下を非自立群(9名)、6点以上を自立群(11名)とし、2群間の差をχ2検定及びt-検定を用い検討した.更に目的変数を移乗動作非自立・自立の2値データ、説明変数を2群間で有意差が見られた項目とし、ロジスティック回帰分析を用いて検討した.いずれの解析も危険率5%未満を有意とした.なお、対象者全員に本研究の趣旨を口頭で説明し同意を得た.
【結果】単変量解析では、発症日から入院日までの日数、麻痺側下肢BRS、腹筋力、非麻痺側脚伸展筋力、麻痺側脚伸展筋力の2群間に有意差が認められた.ロジスティック回帰分析では、説明変数中で麻痺側脚伸展筋力のみ有意な変数として抽出された.
【考察】ロジスティック回帰分析の結果から、麻痺側脚伸展筋力は、麻痺側下肢の随意運動が可能な脳卒中片麻痺患者のベッド-車椅子間の移乗動作自立度に影響を及ぼす要因である可能性が示唆された.

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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