関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 21
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口述発表3(骨・関節系)
TKA術後の屈曲可動域獲得と下腿骨体軸回旋
*岩崎 翼宮本 梓宇良田 大悟糸井 祥子久保 知佳坂本 直文福田 潤山路 雄彦
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抄録

【目的】 近年、人工膝関節全置換術(以下、TKA)においてMobile-bearingが使用されてきている。Mobile-bearing は、インサート自体が回旋する構造をしているため脛骨コンポーネントの設置位置の影響を受けずに屈曲が可能とされている。これは生理的な機能の獲得を目指すものではなく、構造的な改善により可動域を獲得するという戦略が練られている。生理学的に膝関節は屈曲に伴い下腿骨が内旋する。しかしMobile-bearingでは下腿骨が内旋位・外旋位どちらであっても膝関節の屈曲には理論上、影響しない。構造的に屈曲が可能であっても、あくまで膝関節を屈曲するのは筋である。筋を含む軟部組織は術前後で生理学的機能は変わらず、膝関節屈曲に伴う内旋を再現しようとする。ここにインサートの戦略と軟部組織の機能に矛盾があるように感じる。TKA術後の屈曲可動域と下腿骨体軸回旋の関係について調べ、この矛盾が膝関節屈曲可動域に与える影響を検討した。 【方法】 当院でPS-type Mobile-bearing(BIOMET社)を施行された10例を対象とし、術前・退院時(術後平均26.7±4.7日)に可動域の計測を実施した。計測項目は膝関節屈曲・伸展・下腿骨体軸内旋(以下、IR)・下腿骨体軸外旋(以下、ER)の4項目(屈曲・伸展は自動運動、IR・ERは他動運動にて実施)とした。計測方法は、日本整形外科学会が定める方法を参考とし、IR・ERは岩崎らの方法 (検者内信頼性ICC=0.77) を用いた。計測角度は1°刻みとし、各項目3回の計測を実施した。得られたデータの平均値を用い、Pearsonの相関係数にて統計処理を実施した。統計処理にはSPSS15.0を使用した。 【結果】 術後屈曲可動域は術後IR(r=0.70)と強い正の相関を示した。 術前屈曲可動域は術前IR(r=0.58)と中等度の正の相関を示した。 術後屈曲可動域と術前屈曲(r=0.36)・術前伸展(r=0.26)・術前IR(r=-0.08)・術前ER(r=0.44)可動域には相関が弱い。 【考察】 術後屈曲可動域の獲得には術後IRの獲得が必要となる可能性が示唆された。つまりMobile-bearingであっても生理学的な機能を獲得することが重要であると言える。これに加えて、術後屈曲可動域と術前屈曲・術前伸展・術前回旋可動域に相関が少ないことから術後のアプローチの重要性が示唆される。特に骨性の制限を伴う術前と異なり、術後では軟部組織が可動域制限となりやすい。このことからも理学療法士がいかに軟部組織へのアプローチで成果を出せるかが術後の屈曲可動域を決める可能性がある。 【まとめ】 今回の結果から可動域との関連性を示すことができたが、その素因については今後の検討を必要とする。

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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