関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 13
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口述発表2(理学療法基礎系)
立ち上がり動作における膝関節角度および動作速度の違いが足圧分布に与える影響
*鈴木 勝年相馬 俊雄竹田 裕樹
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抄録

【目的】椅子からの立ち上がり動作において,足部を後方に引いた指導を行った場合,足底圧中心(COP)は,通常よりも足部の前方へ移動する.先行研究では,COPの前後移動は,身体の前方移動相(第3相)と上方移動相(第4相)を反映していると報告されている.しかし,立ち上がり動作中の足部および足趾に着目し,分析を行った報告は少ない.そこで本研究の目的は,椅子からの立ち上がり動作において,膝関節屈曲角度および動作速度を変化させた時の足圧分布に及ぼす影響を明らかにすることである.
【方法】インフォームドコンセントの得られた健常成人11名を対象とし,足圧分布測定システム(F-scan)と三次元動作解析装置(VICON MX)を使用した.椅子からの立ち上がり動作開始前の膝関節屈曲角度は90°,100°,110°の3条件とし,動作速度は遅い立ち上がり(以下,bpm50)と速い立ち上がり(以下,bpm80)の2条件の合計6条件で行った.解析は,立ち上がり動作を4相に分け,足底部を4分割し比較検討した.統計は,得られた足底部の荷重量に対して一元配置分散分析を行い,事後検定にはTukey法を用い有意水準を5%とした.
【結果】すべての被験者において,膝関節屈曲角度が大きくなるにつれて,足趾部と前足部の荷重量が増加した.第3相では,bpm50とbpm80の足趾部,前足部で,膝屈曲90°に対して110°で有意に大きな値を示した(p<0.01).また,bpm50の足趾部,前足部で,膝屈曲100°に対して110°で有意に大きな値を示し(p<0.05),bpm80の前足部で,膝屈曲100°に対して110°で有意に大きな値を示した(p<0.01).bpm80の足趾部の膝屈曲110°では,体重に対し34.3%の荷重があった.第4相では,bpm80の足趾部で,膝屈曲90°に対して110°で有意に大きな値を示した(p<0.05).
【考察】第3相では,膝関節屈曲角度が大きくなるにつれ,重心の前方移動時にCOPは足部のより前方へ移動しているため,足趾部と前足部の荷重量が増大したと考えられる.足趾部に荷重量が増大した理由として,第3相から第4相にかけて,重心が前方移動から上方移動へと方向転換し,前方への重心移動を制御する必要があるためと考えられる.第4相では,第3相での前方への重心移動が第4相においても残存しているため,足趾部の荷重量が増大したと考えられる.
【まとめ】足部を後方に引いた立ち上がり動作は,足趾機能に重要な役割を果たしていることがわかった.今後は,動作中の足趾の圧迫力にも着目し検討していきたいと考える.

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© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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