抄録
【目的】
当院リハビリテーション(リハ)外来における、肩関節周囲炎(肩周)と腱板障害(腱板)症例のリハ期間に関する分析を行い、疾患の特徴を明らかにすることである。
【方法】
2010年4月~9月にリハを実施した肩周28名31肩(男性11名、女性17名、平均57.4±11.4歳)、腱板22名23肩(男性7名、女性15名、平均67.2±11.4歳)を対象とした。肩周で150日以内にリハを終了したのは16肩で、内訳は経過良好11肩、手術1肩、その他4肩であった。このうち経過良好の11肩(男性4名、女性6名)を150日以内終了群(肩周終了群)とした。150日を超えたのは15肩で、内訳は経過良好8肩、継続5肩、その他2肩であった。これら15肩に手術症例1肩を合わせた16肩(男性6名、女性9名)を150日超過群(肩周超過群)とした。腱板症例中150日以内にリハを終了したのは14肩で、内訳は経過良好6肩、手術4肩、その他4肩であった。このうち経過良好の6肩(男性2名、女性4名)を腱板終了群とした。150日を超えたのは9肩で、内訳は経過良好4肩、継続3肩、その他2肩であった。これら9肩に手術症例4肩を合わせた13肩(男性5名、女性8名)を腱板超過群とした。評価項目はリハ初回時の肩ROMと痛みとし、マン・ホイットニ検定、フィッシャーの直接確率法を用いて統計的検討を行った。ROMは他動屈曲と外転角度、痛みは安静時と夜間時の有無を評価した。
【結果】
肩周終了群、超過群の平均ROMは、屈曲158.2±23.9°、124.1±32.0°、外転144.5±37.8°、100.0±39.3°で両方に有意差をみとめた(p<0.01)。安静時痛は18.2%、56.3%にみとめ、リハを長期化させる傾向を示し(p=0.06)、夜間痛は18.2%、87.5%で有意にリハを長期化させる因子であった(p<0.01)。腱板終了群、超過群の平均ROMは、屈曲151.7±34.3°、143.5±24.5°、外転127.0±52.9°、124.6±35.5°、安静時痛は66.7%、61.5%、夜間痛は83.3%、76.9%にみとめ、有意差をみとめなかった。
【考察】
当院における肩周のリハ短期成績が、ROMと痛みに有意に関連していることは、肩周の病期分類の基準を反映しており、肩周終了群に軽度のROM制限を有する凍結期の症例が集まっていたものと推測した。また腱板症例は終了群と超過群で、ROMと痛みに有意差をみとめなかった。これは2つの疾患が症状は類似していても病態が異なることを示唆しており、効率的なリハの実施上、腱板機能等の別の因子の存在にも早期より注目し、治療を行うことが大切ではないかと考えた。