関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: PF2-7-053
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フレッシュマン7 「運動器2」
認知症・歩行能力低下を有しアプローチに難渋した上腕骨頚部骨折症例を経験して
*石津 克人袴田 暢野嶋 素子土田 有希子八町 秀美
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抄録
【はじめに】
今回,左上腕骨頚部骨折症例を経験した.左上肢機能障害以外に,認知機能・歩行能力低下,ADL全般に介助を要していた.どのようにアプローチすれば良いか分からず,その中でトイレ動作の介助量軽減を図ろうと考え訓練を実施した.その経過に考察を加えて報告する.
【症例紹介】
85歳女性.左上腕骨頚部骨折.H22.9.4転倒し受傷,入院.9.8理学療法開始.9.16観血的骨接合術施行.9.21理学療法再開.10.20退院.受傷前生活:独居.独歩自立.周囲と会話噛み合わず適切に関われない.既往:脳梗塞,認知症.
【開始時評価】
車椅子介助で来室.左上肢三角巾・バストバンド固定.疼痛:左肩関節安静時痛あり.Brunnstrom stage:左手指VI,左下肢VI.起居動作自立.移乗見守り.T字杖歩行軽介助.HDS-R 13点.FIM 56点(運動40点,認知16点).食事以外要介助.
【経過】
受傷後4日,下肢筋力強化,歩行訓練を開始.術後5日理学療法を再開,術前からの歩行訓練に加え左肩関節PassiveROMexを実施.術後1週,トイレ動作は下衣の上げ下げ・後始末の介助量が多く,弾性包帯を使用して下衣の上げ下げの訓練を追加した.術後2週,声かけで可能となり,実用性を求めて病衣の下衣を使用する方法に変更.術後3週,トイレ動作が見守りとなった.一方,病棟で興奮する場面が多く,抗不安薬の内服が開始された.傾眠の症状強く歩行が不安定となった.術後 4週,左肩関節のActiveROMex,筋力強化訓練を開始.両手を使用しトイレ動作が可能となったが,立位・歩行の不安定性は残存していた.術後5週,ショートステイ先である介護老人保健施設へ退院となった.
【最終評価】
ROM-T(Passive):左肩関節屈曲100°,外転85°,外旋15°,内旋75°.疼痛:左上肢挙上時に肩関節周囲に運動時痛.独歩軽介助.院内移動は主に車椅子介助.FIM 66点(運動52点,認知14点).移乗,トイレ動作,下半身更衣で改善.
【考察】
上腕骨近位部骨折の危険因子として歩行能力低下が挙げられており,本症例も立位・歩行が不安定であった.上腕骨頚部骨折症例では上肢機能のみならず下肢・体幹機能への介入が重要な場合もあると考えられた.本症例は多くの問題点を有しており,どのようにアプローチすれば良いのか分からなかった.その中で,日常で数回は行なわれるトイレ動作の介助量軽減が必要ではないかと考え訓練を実施した.介助量軽減はみられたが,ADL全般に介助を要する状況は変わらず,今後の課題と思われた.
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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