抄録
【はじめに】
当院の介護予防通所リハビリテーション請求事業所(以下,通所リハ)は、急性期総合病院に併設されており,神経難病や比較的リスクの高い利用者も受け入れていることが特徴である.今回,通所リハ利用者の介護予防効果について検討したので報告する.
【目的】
通所リハ利用者の介護度の変化を調査し,その結果から通所リハの介護予防効果を考察する.
【対象】
2010年1月から同12月の期間在籍していた利用者110名(男性50名,女性60名) 平均年齢75.6歳(54歳~91歳)である.利用者の主病名は中枢疾患58名,整形外科疾患36名,内科疾患6名,神経難病疾患10名である.2010年1月の介護度別内訳は要支援1:42名,要支援2:27名,要介護度1:16名,要介護度2:19名,要介護度3:4名,要介護度4:2名である.なお,利用者には書面にて発表の同意を得た.
【方法】
利用者の2010年1月の介護度を基準とし,2010年12月の介護度の変化を比較した.
【結果】
利用者を維持改善されたグループと悪化したグループの2群で比較すると,介護度が維持または改善した割合は全体の86.4%であった.疾患別の悪化した人数は中枢疾患5名,整形疾患2名,内部疾患1名,進行疾患7名であった.
【考察】
利用者のうち維持改善された割合は,唐沢らが報告している81.5%,前屋ら82.5%と比較して高い数値である.通所リハでは利用者個々のプログラム立案から実施までをセラピストが行っている為、利用者の身体機能の変化に素早く対応し,指導しながらプログラムを実施することで身体機能改善・活動量の増加といった効果が得られたと考えられる.介護度が改善されていた利用者の平均年齢は73.6歳と全体の平均より若年である他,家庭での役割を有する,または外出の機会を設け,活動量が保たれているなどの傾向が見られた.悪化した利用者平均年齢は78.2歳と全体の平均年齢より高齢であった.またこのグループの4割を占めていたのが神経難病の利用者であった.神経難病の利用者は年齢・発病年齢・発症からの期間などに決まった傾向はみられていない為,どの時期における利用者にも介護度が悪化するリスクがあることを理解し,担当者会議などで情報を共有し,安全な日常生活を送れるよう住宅環境やサービス内容などの助言を行うことが必要である事が分かった.また,悪化した利用者の多くは転倒により日常生活動作能力が低下した者が多いことが分かった.転倒の恐怖心による転倒後症候群となり介護度が悪化したことが考えられる.転倒後症候群による悪循環を断ち切り、利用者の活動量向上を図れるよう,ご家族と協力し,家庭での役割や外出の機会を設ける必要があり,それらの動作に必要な能力を獲得するため個々にプログラムを立案し実施していくことで,介護度の悪化を防ぎ,生活の質の向上に繋げていくことができると考える.