関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O2-14-084
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口述発表14 「神経3」
尾部退行症候群の一症例
新生児期からの介入
*松尾 洋猪又 弥生勝田 温子薄 直宏
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抄録

【目的】
尾部退行症候群は胎生期初期の尾部脊椎の形成不全により発生し、多種の器官に様々な異常をきたす症候群であり、新生児期からの理学療法介入に関する報告は少ない。 今回、脊柱・骨盤の欠損を認める尾部退行症候群の一例に対し、座位獲得を目指した理学療法介入を行った。出生からの経過をまとめたので以下に報告する。
【症例紹介】
症例は在胎37週6日、予定帝王切開にて出生。出生時体重3134g、身長36.0cm、頭囲35.5cm、胸囲37.0cm 、下部脊椎欠損、両下肢の低形成から尾部退行症候群と診断された。脳波検査、頭部CT検査上明らかな異常は認めなかった。MRI検査では脊柱は第8胸椎まで認め、肋骨は10本認められた。骨盤は仙骨がわずかに認められるだけであった。
【説明と同意】
保護者に対し口頭にて本発表の説明を行い、同意の署名を得た。
【評価と介入方法】
初回理学療法介入は生後1ヶ月時であり、上肢の自発運動は活発、筋緊張は正常であった。体幹は低筋緊張であり自発運動も少なかった。下肢の自発運動は認められず、両側股関節屈曲130°、伸展-60°、両側膝関節屈曲105°、伸展-95°両側足関節底屈5°と拘縮が著明であった。骨盤が欠損しているため、将来の座位での生活を視野に入れ、股関節屈曲角度維持目的に関節可動域訓練、体幹伸展活動を促通するために頚部・上肢の感覚運動経験を生後1ヶ月より開始した。全身状態は安定しており、家族へ股関節屈曲関節可動域訓練、頚部・上肢への感覚運動経験を指導し、生後3ヶ月にて自宅退院となった。
 生後4ヶ月で定頚、5ヶ月でおもちゃ握り、9ヶ月で胡座位のポジションを設定することでの手支持座位保持、10ヶ月でずり這い、1歳1ヶ月で四つ這いを獲得したが、腹直筋の収縮はなく、腹斜筋がわずかに確認できたのみであり、上肢支持なしでの座位保持は困難であった。
【考察】
本症例は、腰椎と骨盤の欠損が認められる尾部退行症候群であり、体幹屈筋群の活動が得られにくく自力での座位保持は困難であると考えられた。しかし、上肢機能が残存し、知的面での発達が期待できたため、新生児期より座位獲得を目標とし、股関節可動域維持と体幹筋力強化を継続して行った結果、上肢支持による座位保持、四つ這い移動を獲得することが出来た。  尾部退行症候群に対し、新生児期から長期的な視点で理学療法介入を行うことの有効性や必要性が示唆された。

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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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