関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: S-002
会議情報

教育講演1
現代社会のニードに挑む −予防理学療法の将来展望−
大渕 修一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 中世までの医療は、西洋・東洋で差がなかった。東洋医学の漢方に当たるものはハーブ療法として、瀉血にあたるものは理髪店の看板にと様々な証拠がこれを物語っている。更には、加持祈祷も当時の医療の拠点を兼ねていた教会で行われていた。

 近世で東洋と西洋を大きく隔てたのは、デカルトによる操作的定義の理解である。人間と病気は不可分と思われてきたこれまでから、人間の中から発熱、疼痛などを取り出し測れる対象とすることによって治す医療としての西洋医療が大きく発展した。繰り返しになるが西洋では、制約があることは理解しつつも便宜的に人間と病気を分離したことが西洋医学の進歩の根源であることはよく理解しなければならない。

 このような操作的定義によって多くの病気が治癒するとともに、完全には治癒できない慢性疾患が意識されるようになった。慢性疾患は治癒不可能なのであるのだから、病気との共存が命題となる。操作的定義によって分断された人間と病気の再統合が必要になったと言える。このような中で障害の概念が形成され、障害との共存を促すリハビリテーションの体系が築かれることになった。

 治す医療とリハビリテーションを手に入れた現在は老化への対応を必要としている。障害と同様に老化は取り除くことができないのであるから、リハビリテーション技術で応用可能な部分は多いだろう。 しかし不十分でもある。すなわち老化への対応の帰結は死なのである。新しい予防理学療法学ではより良く生きた結果としての死とは何かが説明できなければいけない。すくなくとも予防理学療法学の帰結が死の否定であってはいけない。老化を制御することと平穏に死ぬことを同時に満たす予防理学療法学をわれわれは創出できるのだろうか。

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top