関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-005
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口述
長期的な介入により機能改善を認めた頸椎術後C5麻痺を呈する超高齢者の一例
齊藤 大樹根本 祐司沼尻 一哉河野 衛
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キーワード: C5麻痺, 超高齢者, 負荷調整
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抄録

【はじめに】頸椎術後の合併症である第5頸髄領域(以下: C5)を中心とした麻痺は,MMT2以下の上肢近位筋の脱力が生じると完全回復が難しく,予後不良であったと報告されている.しかし,今回,頸椎椎弓形成術後に右C5麻痺を呈した超高齢者へ神経回復過程に合わせた長期的な介入を行った結果,右上肢機能の改善を認めたため報告する.尚,ヘルシンキ宣言に基づき本人に説明,同意を得た.

【症例紹介】認知症がない92歳男性.手指巧緻性障害及び跛行を呈する頸椎症性脊髄症に対し椎弓形成術を施行した.術後3日目に右C5麻痺を認め,MMT(Rt/Lt)は僧帽筋4/4 三角筋2/4 上腕二頭筋1/4 上腕三頭筋2/4 ,Gripは13.6kg/10.5kg,頸椎JOA scoreは6.5点,右上肢は手機能が残存しているが近位筋が麻痺し,補助手としての機能も乏しい状態であった.

【経過と治療】針筋電図検査等が実施され,機能回復に合わせ介入を行った.抗重力運動が不十分であった術後 18 ヶ月までは麻痺筋への負荷に注意し,低頻度パルス刺激での神経筋電気刺激や重力の影響を調整した状態で上肢運動を行い,代償動作を抑制した中で関節運動を促した.また,補装具を作成し,獲得された機能を生活動作に反映させていった.経過比較として座位での右肘自動屈曲角度を追い,術後 0 〜6 ヶ月では0°であったが,術後 9ヶ月から徐々に改善を認めた.術後24ヶ月のMMTは僧帽筋4/4 三角筋2/4 上腕二頭筋3/4上腕三頭筋4/4,頸椎JOA score は9.5点,座位での右肘自動屈曲は120°となり,右手で口元までリーチ及び食事動作が可能となった.

【考察】本症例は超高齢者であってもコンプライアンスが良く,神経回復に合わせて負荷量を調整しながら継続的なアプローチが行えた為,麻痺筋への適正な刺激入力が増加し,良好な経過を辿ったと考える.また,術後9 ヶ月から麻痺領域の機能回復を認めたことは神経,筋ともに回復の可能性があることを示しており,長期的な介入を行う価値があると考える.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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