関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-022
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口述
心原性脳塞栓症により右中大脳動脈閉塞となった症例〜急回復した身体機能と残存高次脳機能障害の検証〜
山本 精一
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抄録

【はじめに】脳血管疾患患者で、身体機能が著明改善するも高次脳機能障害の影響からADL自立困難となる例は多く、本症例も心原性脳塞栓症、右中大脳動脈閉塞となり同様に自立に至っていない。これらを脳画像所見、各種理学療法評価などで検証し治療介入した。

【症例紹介】70代男性、既往心臓弁膜症、2型糖尿病、今回心原性脳塞栓症発症。第1病日JCS100、BRS(左)上肢Ⅰ手指Ⅰ下肢Ⅱ、感覚脱失、FIM18点。第80病日JCS 1、BRS(左)上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅲ、感覚重度鈍麻、FIM60点と身体機能改善も星印末梢左13見落としなど左USNあり。コース立方体7/131点、三宅式検査で短期記憶低下なし。発症早期MRIで右頭頂葉・側頭葉と、前頭葉・後頭葉一部に梗塞巣。以上から右前頭葉運動野、頭頂葉感覚野及び感覚連合野損傷と、上縦束など連合繊維遮断があり、運動感覚障害と感覚運動統合の影響で高次脳機能障害出現と考えた。感覚運動障害に対し下肢体幹促通や基本動作訓練に加え、残存視覚や記憶など代償利用し左USN改善や着衣動作などADL改善目指し介入した。

【倫理的配慮】本発表はヘルシンキ宣言に基づき、本人と家族に趣旨説明し、文書にて同意を得ている。

【結果】第150病日BRS(左)上肢Ⅳ手指Ⅳ下肢Ⅴ、感覚中等度鈍麻、FIM69点、FBS26/56、TUG15秒台、10m 歩行10秒台、線分抹消左15見落とし、コース立方体2/131点。身体機能さらに改善も左USN、ADL場面での判断能力低下などあり自立せず。但し、記憶・視覚の代償で廊下での左方向転換、着衣動作も目印で可能となった。

【考察】第150病日のCTでは正中線シフト戻り、陳旧性梗塞も放線冠など皮質脊髄路にない為、身体機能回復したと考える。但し右上下頭頂小葉などの頭頂葉や側頭葉に依然大きな梗塞巣あることが、感覚運動統合や構成障害、左USN残存原因と考える。しかし視覚や記憶など残存機能使用で、生活場面での自立度向上が得られることも確認された。

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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