関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: O-026
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口述
全身状態不良であり発症1ヶ月間はベッド上であったが歩行器歩行可能となった重症くも膜下出血の1例
片倉 哲也石井 頌平三木 啓嗣水谷 純子小幡 加奈川村 慶
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抄録

【目的】機能予後予測から正の方向へ大きく逸脱する症例を経験する事がある.今回,重症くも膜下出血を発症,意識障害が遷延し療養病院への転院の可能性があったが,徐々に意識障害が改善し回復期病院へ転院となった症例を経験したためその特徴及び経過を報告する.

【症例】発症前ADL自立の50歳代男性.椎骨動脈解離によるくも膜下出血発症し同日入院,Hunt & Kosnik分類4,WFNS分類5.

【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に則り対象者家族へ説明,書面にて同意を得た.

【経過】2病日にコイル塞栓術実施し3病日より理学療法開始となったが,理学療法開始時は安静度ベッド上でありJCS200であった.5病日に開頭血腫除去術と外減圧術を実施.14病日に人工呼吸器離脱.29病日に頭蓋形成術とV-Pシャント術を実施.31病日にJCS30,安静制限解除となり端座位練習開始.37病日に能動的な動きは認めない状態であったが3人介助にて起立練習開始.51病日に起立時に体幹・下肢筋の活動を認めるようになり1人介助にて起立練習可能となった.56病日に2人介助にて歩行練習開始.66病日に手指把握動作を認めるようになり1人介助にて平行棒内歩行練習開始.72病日トイレ誘導開始.78病日回復期病院へ転院となった.退院時評価はJCS3,気管切開のため言語表出困難だが理解はわずかに可能,MMT四肢3,ROM左肩と両手指・股・膝・足関節に軽度可動域制限あり,起居・移乗動作は能動的な動きを認めるが中等度介助,歩行は中等度介助で歩行器歩行可能となった.

【考察】重症くも膜下出血症例は一般的に生命・機能予後が悪く意識障害を遷延しやすいとされているが,本症例は発症前ADL自立,かつ若年,脳血管攣縮による脳梗塞が発生しなかったため歩行器歩行可能となったと考える.くも膜下出血,特に重症例は発症後早期に転帰を予測する事は難しい症例も多く,重症であっても様々な転帰を意識した理学療法を実施することが良いと思われる.

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© 2019 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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