関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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スペシャルオーラル
SPO-2 適正体重未満の血液透析患者における腹部CT で評価した骨格筋量および脂肪組織分布と生 命予後との関連
小島 将臼井 直人椿 淳裕繁竹 真人稲津 昭仁上畑 昭美
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キーワード: 血液透析, 腹部CT, 脂肪組織
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p. 2-

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抄録

【背景】 血液透析(HD)患者では,一般集団とは異なりBMI が低く,かつ腹囲の増加した腹部肥満患者が最も予後不良であり,これはBMI パラドックスとして知られている.腹部CT は骨格筋量に加え,内臓と皮下脂肪,筋内脂肪の指標である骨格筋密度(SMD)など詳細な脂肪組織の分布が評価可能である。従って,BMI の低いHD 患者の中でも特に予後不良な患者特性を明らかにできる可能性がある.本研究の目的は,適正体重未満のHD 患者を対象に腹部CT で得られた骨格筋量と脂肪組織分布が生命予後へ与える影響を検討することである.

【方法】 対象は,2013 年1 月~2019 年12 月に腹部CT 検査をしたHD 患者368 名の内, BMI 22 kg/m2 未満の

216 名を対象とした.第三腰椎レベルの横断像から総骨格筋面積(CSA),皮下脂肪面積(SFA)と内臓脂肪面積

(VFA)を算出した.SMD はCSA のCT 値を平均して算出した.また,VFA/SFA 比を算出した.CSA とSMD,VFA/SFA 比と生命予後との関連について,従属変数を全死亡,共変量を年齢,性別,透析歴,糖尿病・心血管疾患の既往,アルブミン,C 反応性タンパクとしたCOX 比例ハザード解析を用いて解析した.

【倫理的配慮】 本研究は,嬉泉病院倫理委員会の承認(2020-06-002)を得て実施された.

【結果】 観察期間中央値は3.2(1.6-5.0)年であり,108 名が死亡した.単変量解析ではCSA,SMD,VFA/SFA 比のすべてが生命予後と独立して関連しており(p<0.01),共変量調整後もCSA(HR:0.97[0.96-0.99]),SMD

(HR:0.95 [0.93-0.98]),VFA/SFA 比(HR:1.06[1.02-1.11])ともに独立した生命予後予測因子だった(p<0.01). 【結語】 適正体重未満のHD 患者では,骨格筋量が低く,筋内脂肪が多い,かつ内臓脂肪に対して皮下脂肪の割合が少ない患者が最も予後不良であることが示唆された.適正体重未満のHD 患者においては,骨格筋量の増加と各脂肪組織分布の改善を達成できる包括的な介入が必要であると考えられる.

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© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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