関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O6-3 人工股関節全置換術後早期における股関節内転筋へのダイレクトストレッチングの効果
松井 拓巳平尾 利行妹尾 賢和
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p. 38-

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抄録

【目的】当院における人工股関節全置換術(THA)患者は1 週間以内のクリニカルパスを用いており、歩行能力の向上やADL 能力の向上は急務である。そのため、今回の研究では、THA 術後早期の症例に対し、股関節内転筋群への介入方法の違いが歩行に及ぼす影響を明らかにすることである。

【方法】対象は、2019 年7 月から10 月に寛骨臼形成不全症を起因とし初回片側THA を施行した患者30 名をダイレクトストレッチ群(DS 群)15 名、スタティックストレッチング群(SS 群)15 名に分類した。年齢およびBMI に有意差は認めなかった。評価項目は、術後3 日目における4m 歩行速度 、立位骨盤アライメント、外転筋力を介入前後で実施した。評価と介入は同一検者が行い、薄筋と長内転筋に対し、DS またはSS を30 秒2 セットずつ実施した。統計解析は、群間と時期の2 要因で分割プロットデザインによる分散分析を用いて検討し、交互作用を認めた項目に対し下位検定を行った(P<0.05)。

【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の倫理委員会の承認(承認番号:2019033)を得て実施した。

【結果】分割プロット分散分析の結果の平均は(DS 介入前/介入後、SS 介入前/介入後)、 4m 歩行では群間と時期の主効果認め、交互作用を認めた(3.45 秒/2.91 秒、 3.71 秒/3.45 秒)。立位骨盤アライメントでは群間の主効果を認めず、時期の主効果、および交互作用を認めた(12.7°/9.3°、8.3°/7.7°)。外転筋力では、時期の主効果を認め、群間の主効果および交互作用は認めなかった。

【考察】内転筋への介入は、骨盤を前傾方向へ牽引していた内転筋の伸張性が増したことによって骨盤が中間位方向へ是正され、外転筋力が向上し、歩行速度が改善したものと考える。また、4m 歩行速度では、SS よりもDS の方が有意に改善したことからDS は術後早期において有用な介入方法と考える。

【結果】THA 術後早期における内転筋へのDS は、歩行能力向上に寄与することが示唆された。

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