関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O6-5 大腿骨近位部骨折術後早期の基本動作と退院時歩行能力の関連-Cumulated Ambulation Score(CAS)による検討-
津村 諒高野 義隆丹田 萌絵高林 知也山本 智章
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p. 40-

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抄録

【目的】近年,術後患者において基本動作能力を評価するツールとしてCumulated Ambulation Score(以下,CAS)が用いられている.特に大腿骨近位部骨折術後ではCAS が術後合併症や生存率の有意な予測因子であり,自宅退院率とも相関があることから,転帰の予測に有用と報告されている.しかしCAS と退院時歩行能力との関連は明らかになっていない.そこで本研究は,CAS と退院時歩行能力との関連性について検討した.

【方法】対象は2020 年8 月から2021 年3 月までに当院で手術を行い、退院時の歩行評価が可能であった大腿骨近位部骨折患者17 名である.評価項目は年齢,受傷前移動能力,CAS,退院時の屋内歩行能力とした.CAS は術後1 日目からPT 介入時の端坐位,移乗,歩行動作を,不可:0 点,要介助:1 点,自立:2 点としてスコア化し,介入

7 日目までの合計点を算出した.退院時の歩行能力は独歩・T 字杖群と歩行器以下群の2 群に分けCAS との関連を検討した.統計学的手法はMann-Whitney のU 検定による2 群間の比較を行い,有意水準は5%とした.なお,本研究は対象者の倫理的配慮を行い検討した.

【結果】独歩・T 字杖群は6 名(男性:2 名,女性4 名,平均年齢79.2±7.7 歳)であり,全員が受傷前独歩レベルであ

った.歩行器以下群は11 名(男性:2 名,女性:9 名,平均年齢86.5 歳±9.0 歳)であり,受傷前移動能力は独歩が2 名,伝い歩きが2 名,歩行器が3 名,車椅子が4 名であった.年齢では2 群間で有意差は認められなかった.CAS は独歩・T 字杖群で30±12.2 点,歩行器以下群で19.6±6.7 点であり,独歩・T 字杖群が歩行器以下群と比較して有意にCAS が高値を示した.

【考察】本研究では独歩・T 字杖群においてCAS が有意に高値を示し,退院時歩行能力との関連が示された.よってCAS は術後早期より退院時歩行能力の予測が可能な評価ツールとして活用できる可能性が示唆された.今後は症例数を増やし,更なる有効性を検討していく必要があると考える.

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© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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