主催: 公益社団法人日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
会議名: 第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
開催日: 2021/09/04 - 2021/09/05
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【背景,目的】変形性膝関節症(Knee OA)の発症・進行因子に,肥満度(BMI)が挙げられる。Knee OA 患者の体重管理は,疼痛緩和や機能改善に関連することが報告されている。しかし,起立・着座動作を含んだパフォーマンステストに対するBMI の影響は不明である。本研究の目的は,Knee OA 患者の関節可動域・歩行速度・動的バランスについて,BMI の違いによる影響を明らかにすることである。
【方法】対象は,2019 年1 月~2020 年12 月に人工膝関節全置換術を控えた片側Knee OA 患者とし,診療録に基づき後方視的に検討した。除外基準は,他の整形外科疾患や脳神経疾患を合併している症例とした。評価項目は,術前日の膝関節可動域(屈曲・伸展),Timed Up and Go Test(TUG),10-meter Walk Test(10MWT),Functional Reach Test(FRT)とした。これらの評価項目のデータ正規性を確認した後,有意水準5%として非肥満群(BMI30 未満)と肥満群(BMI30 以上)で比較(対応のないt-test)した。
【結果】対象者は,非肥満群192 名(平均年齢75.1 歳,女性165 名 男性27 名)と肥満群58 名(平均年齢70.8
歳,女性50 名 男性8 名)であった。各評価項目の平均値±標準偏差を,非肥満群/肥満群(p 値)で示す。屈曲可動域(°)は122.3±25.6/111.7±20.5(p=0.0001),伸展可動域(°)は-7.4±7.5/-10.4±8.8(p=0.01),TUG
(秒)は10.3±4.8/11.8±4.3(p=0.02),10MWT(秒)は10.7±4.7/11.8±4.3(p=0.06),FRT(cm)は19.5±7.9/
19.5±7.1(p=0.97)であった。
【考察,結論】Knee OA 患者の膝関節屈曲・伸展可動域とTUG は,非肥満群と比較して肥満群において有意に低値を認める結果であった。一方,10MWT とFRT は,BMI の違いによる有意差を認めない結果であった。
【倫理的配慮】本研究は観察研究かつ後ろ向き研究であり,データは診療に必要な評価結果を,ヘルシンキ宣言および個人情報保護法の趣旨に則り使用している。