関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第40回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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口述
O8-2 肝機能の改善と筋力回復に関連を示した肝移植術後患者の一症例
中山 穂香宮下 美奈酒井 康成山本 周平三田 篤義副島 雄二大野 康成堀内 博志
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キーワード: 肝移植術後, 肝機能, 筋力
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p. 47-

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抄録

【目的】肝移植患者の筋力低下や運動耐容能低下は複合的な要素から構成され,術後も改善しにくいことが特徴的である.その一要因にタンパクエネルギー低栄養が考えられており術後の筋力を含めたリハビリテーション(以下リハ) 経過の把握が重要と考える.しかし,これまでに肝移植患者の術後経過の特徴,特に急性期領域でのリハ経過の報告はない.そこで,術後リハ経過の特徴に関して経時的に評価することができた症例を経験したためここに報告する. 【症例紹介】31 歳.男性.生後2 ヶ月で先天性胆道閉鎖症と診断され葛西手術を施行,10 歳で脾臓摘出術を施行.X

年に食道静脈瘤破裂に対し内視鏡的静脈瘤結紮術施行されたが,その後胆管炎発症,腹水の増悪あり,生体肝移植施行に至った.術後2 日より理学療法介入開始し,筋力トレーニングおよび有酸素運動を中心に,運動強度はborg13

前後を指標として実施した.握力および膝伸展筋力を随時測定し,血液検査データはカルテより調査した. 【倫理的配慮】対象者にはヘルシンキ宣言に基づき趣旨を説明し,口頭及び書面にて同意を得て実施した.

【経過】離床は比較的順調に進行し,術後25 日に術前ADL を獲得.術後81 日で自宅退院となる. 一方で筋力回復は遷延しており,初回から術後40 日までの変化量は握力が0kg,膝伸展筋力が-0.9kgf, 術後40 から65 日にかけての変化量は握力が5.5kg,膝伸展筋力は9.6kgf であった.血液検査データについて,アルブミン(以下Alb)は術後40

日まで2.6 から2.9 を推移し,術後40 日から65 日にかけて3.6 まで改善した.CRP は術後40 日から65 日にかけて徐々に減少し陰転化した.γ-GT,AST,ALT は術後40 日まで減少傾向でありその後大きな変化は見られなかった. 【考察】本症例から肝移植後のリハ経過として肝機能の改善に伴って筋力も回復するという特徴が見られており,その中でもAlb の推移に類似した筋力の変化が認められた.よって,プログラムを立案する際に肝機能指標も考慮するべき可能性がある.

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© 2021 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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