抄録
【目的】
2020年度診療報酬改定により「運動量増加機器加算」が新設と
なった. 2022年度より当院でも歩行神経筋電気装置であるNMF1(伊藤超短波株式会社)を導入した.急性期での重度片麻痺患者
に対する症例報告例が少ない.今回,重度片麻痺患者に対して長下
肢装具歩行訓練(KAFO歩行訓練)とNM-F1を併用(KAFO歩行
訓練+NM-F1)した症例を経験した為,症例報告を行う.
【方法】
70歳台男性,構音障害,左片麻痺,感覚障害が生じ右視床出血,
脳室内穿破の診断にて当院入院.2病日目よりリハビリ介入開始.
初期評価は意識清明,軽度構音障害,Brunnstrom Recovery
Stage(BRS)左上肢Ⅲ・手指Ⅳ・下肢Ⅱ,表在・深部感覚ともに左
上下肢脱失,Trunk Control test(TCT)0点,基本動作全介助,
FIM40点(M13点・C27点)である.
【結果】
8病日目にKAFO歩行訓練開始.15病日目よりKAFO歩行訓練
+NM-F1を実施.NM-F1は足関節背屈・外反するように粘着パッド
を装着,TGスイッチを使用し,タイミングは左下肢の遊脚期~立
脚前期とした.最終評価ではBRS(左)上肢Ⅳ・手指Ⅳ・下肢Ⅲ~
Ⅳ(足関節の背屈一部あり),左上下肢表在・深部感覚重度鈍麻,
TCT36点,四点杖+KAFO歩行中等度介助,FIM60点(M26点・
C34点)となり,23病日目に回復期リハビリテーション病院へ転院
となった.
【考察】
Swayneらによる脳卒中発症後の経時的な運動麻痺回復ステージ
理論があり,急性期では残存している皮質下脊髄路を刺激しその
興奮性を高めることで,麻痺の回復を促通する時期と述べている.
本症例はKAFO歩行訓練+NM-F1を行ったことでKAFO歩行訓練
単発の介入よりも神経筋再教育向上し,運動麻痺の回復に繋がった
と考える.
【結論】
急性期の重度片麻痺患者に対してKAFO歩行と歩行神経筋電気刺
激装置併用は機能回復の一助となる.今回は一症例であり,今後
は症例数等を増やし更なる検証が必要である.
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に基づき,本人に対し内容や目的について
口頭や書面で説明し,同意を得た.