抄録
【はじめに,目的】
片脚立位はバランス能力を評価するために行われることが多く転
倒リスクや歩行能力との関連も示されている(津田ら.2019).片
脚立位と足部機能に関する先行研究では,後足部アライメント(小
林ら.2009・佐野ら.2011)や足関節内反捻挫後の不安定性(鈴
木ら.2014)に着目したものが散見されるが,左右差や前足部の
影響については検討の余地がある.そこで本研究では片脚立位バ
ランスを前足部のテーピング誘導により制御できるか否かについ
て,左右差を踏まえて明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は健常成人13名(女性11名・男性2名,年齢20.8±0.7歳)と
した.計測には重心動揺計(アニマ.GP-6000.20Hz)を使用し
30秒間の片脚立位を両側実施した.計測条件は誘導なし(裸足条
件),キネシオテープ(ニトムズ.NK-50)による立脚側前足部の外
がえし誘導(外がえし条件)と内がえし誘導(内がえし条件)の3条件
とした.解析項目は総軌跡長,外周面積,左右・前後の動揺平均
中心変位とし,条件間比較には反復測定の分散分析と多重比較検
定,同条件での左右比較には対応のあるt検定を行った(p=0.05).
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には研究の目的や方法を書面と口頭で説明し書面で同意を
得た.なお,本研究は研究実施機関の倫理審査委員会の承認済
みである(承認番号:2024-13)
【結果】
各項目の条件間比較の結果,左足の前後動揺平均中心変位は裸
足条件(-0.91±1.30cm)よりも内がえし条件(-1.43±1.19cm)が
有意に後方に位置した.また,同条件での左右比較の結果,裸
足条件の外周面積は右足(4.29±1.15cm2)よりも左足(5.29±
1.81cm2)が有意に大きかった.
【考察】
足部の剛性は距骨下関節の肢位により変化し,距骨下関節外がえ
し位では剛性が低下する(Seibel, 1996).そして,健常若年者で
は左後足部の方が右よりも外がえし位にある者が多いことから(小
林ら.弐009),本研究においても左足部の剛性が低い対象者が
多く,左片脚立位の方が右片脚立位よりも重心動揺が大きかった
と推察される.
また,足部への荷重下では後足部内/外がえしと前足部内/外が
えしは相反することから(山口ら.2009),前足部の内がえし誘導
は後足部に対して外がえしの作用を有する可能性がある.このた
め,左前足部内がえし条件では足部の剛性が一層低下し,足部が
テコとして作用せず左片脚立位では重心が後方化したと推察され
る.