関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: O3-2
会議情報

一般演題
多方向トレッドミルトレーニングによりバランス能力の改善を認めた頚椎症性脊髄症術後患者の一症例
*佐々木 哲也*岡﨑 陽海斗大坂 祐樹古谷 英孝星野 雅洋
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに,目的】 頚椎症性脊髄症(CSM)患者に対する手術療法はバランス能力を 改善させる.しかし,術後に躓きやふらつき等のバランス障害が残 存する症例を多く経験する.バランス障害に対して,近年多方向ト レッドミルトレーニング(MDTT)の効果が散見され,日常動作に おける後方や側方へのステップ動作において有効性が示されてい る.今回,CSM術後患者に対しMDTTを実施し,バランス能力 の改善を認めたため報告する. 【症例紹介,評価,リーズニング】 本症例は,CSMに対して椎弓形成術を施行された70歳代男性で ある.術後1ヶ月で回復期に入棟し,病棟内ADLはシルバーカー 自立であった.BBSは49点であったが,ふらつきと小刻み歩行を 呈し TUGが13.9秒と転倒のカットオフ値を上回っていた.評価結 果から,動的バランス能力の改善が必要であると考えた. 【倫理的配慮,説明と同意】 本症例検討は,ヘルシンキ宣言に基づき事前に十分な説明を行い, 同意を得た上で実施した. 【介入内容と結果】 介入デザインはAB法とした.A期は通常理学療法を実施し,B期 はA期に加えMDTTを毎日1週間実施した.MDTTは,トレッドミ ル上を前後左右4方向に歩行する.歩行速度は快適速度とし,前 後方向各3分30秒間,左右方向各2分30秒間行った.評価時期は, 介入前(A’ ),A期終了時(A),B期終了期(B)とした.評価項目は, TUG,BBS,10m歩行,3m後方歩行,ロンブステスト(RBT)と した.RBTは前後左右のステップ長を繋ぎ面積を算出し変数とし た.TUG,10m歩行は臨床的最小重要効果変化量(MCID),3m 後方歩行は最小可検変化量(MDC),BBSとRBTは記述的統計量 を用いて効果判定を行った. 結果,TUG[秒](A’ →A→B)(13. 9→13. 2→11. 5),3m後方歩行[秒] (8.23→8.0→5.31),10m歩行[m/s](0.91→0.97→1.07)はB期 にMCID,MDCを上回る改善を認めた.BBS[点](49→50→55) は,各期で改善し.RBT[cm2](750→900→4000)はB期で改 善した. 【考察】 本症例に対してMDTTを行うことでバランス能力が改善した. MDTTは多方向へのステップ能力が改善するため,前方に加え後 方や左右への重心移動を必要とするTUGやRBTで改善が得られた と考える.また,トレッドミルによる規則的な歩行パターン練習に より,ストライド長が改善して歩行速度が向上したと考える.今回 の結果は,短期間であったが,MDTTがCSM術後患者のバランス 能力の改善に有効であることが示された.
著者関連情報
© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top