関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 ・ 第30回千葉県理学療法学術大会 合同大会
セッションID: P1-1-6
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一般演題
広範囲腱板断裂を合併した右変形性肩関節症の治療に難渋した症例
*星 祐吾
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抄録
【はじめに】 強い疼痛によりADL障害が生じている広範囲腱板断裂を伴った変 形性肩関節症患者に対し,疼痛軽減・機能改善・ADL能力向上を 目的にリハビリテーションを行った. 【症例紹介】 70歳代女性右利き.既往歴にリウマチ,白血病, 乳癌(手術),腺 癌(手術)がある.4年前より右肩関節に疼痛があり,他院でリハ ビリと注射(ヒアルロン酸2回,ステロイド1回)を実施したが改善 がみられず,当院受診.主訴は,洗髪動作や掃除で右肩が痛むこ と.レントゲン所見より,肩関節裂隙消失がみとめられ,濱田の 分類Grade 4A.エコー所見より,棘上筋・棘下筋・肩甲下筋の 断裂がみとめられた.疼痛は,安静時痛NRS0,夜間時痛0,運 動時痛6 ~ 7.ROMは肩関節屈曲90°/180°,外転80°/170°,外 旋-10°/30°,内旋(C7TD)49cm/22cm.MMTは屈曲3/5,外 転2/5,外旋2/5,内旋2/5.触診により,棘上筋・棘下筋に 萎縮がみとめられた.整形外科的テストは,Neer test+/-, Hawkins test+/-,full can test+/-,empty can test+/-, belly press test+/-,外旋抵抗test+/-,内旋抵抗test+/-, speed test+/-.腋窩神経領域の感覚10/10.三角筋中部線維 の圧痛+/-.肩関節painful arc sign+/-であった. 【介入と結果】 徒手療法は,過緊張となっている三角筋・僧帽筋上部線維・肩甲 挙筋のリラクゼーション,可動域拡大のために関節包のストレッチ, 肩甲骨の可動域訓練を実施.運動療法は求心位を保つために残存 腱板機能筋である小円筋の筋力訓練,上肢挙上を獲得するために 肩甲骨周囲筋・三角筋の筋力訓練を実施.物理療法は,除痛と筋 緊張の緩和を目的として立体動態波の施行,ADL指導を実施.上 記実施したところ,右手を使用した洗髪動作が可能となった. 【考察】 本症例では広範囲腱板断裂を伴う変形性肩関節症があるため, 肩関節可動域・筋力低下が認められ,疼痛による機能低下のため にADLにも影響が認められていた.残存腱板機能訓練や肩甲骨周 囲の筋力訓練で可能な限りの機能改善を図ったが,機能の改善は 限定的であった.ADLにおいては洗髪動作の指導を行ったところ, 痛みの生じない動作が獲得された.また徒手療法で三角筋の過活 動を抑制し,残存腱板機能筋である小円筋の筋力訓練を継続し, ADLの改善も行われたことで疼痛も若干軽減された. 【倫理的配慮, 説明と同意】 症例報告にあたりヘルシンキ宣言に基づき,対象者本人に説明し 同意を得た.
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© 2024 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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