2001 年 1 巻 p. 77-93
現在,国際政治の分析に政策決定アプローチは重要な視角の一つになっている。しかし政策決定分析モデルの乱立によって,研究者たちの見解は,混沌としている「印象」ということで一致している。本稿は,その混沌とした状況を整理するため,二つの作業を通じて外交政策決定の分析モデルと現実の対応関係を明らかにする試案を提起する。
第1の作業は,既存の外交政策決定分析モデルの特質(モデルの機能から分析範囲,説明能力)を明らかにすることである。検討するモデルは,既存の研究から得られる五つのモデル(最終的には変種も加えて八つ)1)政府間政治モデル,2)組織側政治モデル,3)政府内政治モデル,4)国内政治モデルおよび5)トランスナショナル,ポリティクス・モデルである。第2の作業は,当該外交問題の発生によって規定される政策決定者をめぐる環境に関連した性質,問題解決のための手段と目標に関連した性質および問題解決の結果としての効果に関連する性質を抽出し,それらの性質が認められる外交問題の分析に,作業Iで検討した各モデルのいずれが妥当するのか探っていく。
これらの作業で得られたデータが,日本の外交政策を研究する際に,適切な外交政策決定過程分析モデルはどれかを確定する方法として参考になるであろう。