公共政策研究
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公益法人制度改革――「公益性」をめぐる政治過程の分析――
砂原 庸介
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2012 年 12 巻 p. 17-31

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抄録

2008年に施行された新公益法人制度は,法人格の付与と「公益性」の認定を結びつけていた旧制度を終了させ,両者を切り離すものであった。新しい制度によって,従来の公益法人は,その「公益性」を改めて問い直されることになり,また,非営利事業を行う組織が法人格を取得する可能性が大きく開かれた。

「公益性」の認定なしに非営利事業の主体に法人格を与える必要性は以前から議論されており,1990年代には阪神淡路大震災をきっかけとした特定非営利活動促進法の制定によって法人格の簡便な取得が可能となった。しかし,「公益性」に関わらない組織が法人格を取得できるようになるのは,2001年の中間法人法制定を待たねばならなかった。その後, 2000年代の公益法人制度改革では,行政改革の観点から,従来の公益法人における法人格と「公益性」の認定を切り離す決定が進められた。

この間の政治過程は,「公益性」をめぐる政治過程であると理解できる。「公益性」を限定的なものとして捉えようとする政府・自民党長期政権に対して,それ以外の政党は,「公益性」を広く捉え,包括的な非営利法人制度の改革を求めた。2000年代の改革は,行政改革という側面から限定がかけられたが,旧公益法人制度が終了したことで,今後の「公益性」をめぐる政治過程が変容していくことが予想される。

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© 2012 日本公共政策学会
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