2008 年 7 巻 p. 27-41
国連が新たに打ち出した「ワン・ユーエヌ」という援助行政の素化・効率化計画に鑑み,本稿は,トップ・ダウンだけではなく,ボトム・アップの視点も含んた双方向的なガバナンスの新たな指標を提案する。具体的には,民主主義,開発,グローバル経済化,国際社会との結合,法の文配,社会関係資本の6つの次元がこの指標には含まれる。「ワン・ユーエヌ」の実験に協力を開始したアルバニア,カーポ・ベルデ,モザンビーク,パキスタン,ルワンダ,タンザニア,ウルグアイ,ベトナムにおけるガバナンスの現状をこの6つの次元から比較すると,まず,援助政策において考慮されるべき,途上国における多様性が詳らかにされる。さらに,民主主義は開発とは正の相関関係にあるが,国際社会との結合や経済のグローバル化とは無関係で,経済のグローバル化はむしろ低開発と連動していること,そして法の支配は開発も民主主義も促進しているが,社会関係資本は,少なくとも途上国においては,民主主義と負の相関にあること,などの可能性が示唆される。