2008 年 57 巻 5 号 p. 277-286
加速エネルギーが10MeVを超える医療用リニアック施設の遮へい設計では,光核反応によってターゲットで中性子が発生するが光子の線量に対して無視できるので,一般には中性子の遮へい計算は行わない。しかしながら,ターゲットから発生する光子のみを考慮した遮へい設計を行ったところ,遮へい壁の外側で計算を大きく上回る中性子及び光子が観測された。そこで,リニアック施設の放射線場の実測を行い評価したところ,主として遮へい体内の遮へい鉄板で光核反応による光中性子が生成し,後方のコンクリートでその中性子が捕獲され,2次γ線が発生していることが明確になった。この挙動をモンテカルロ計算コードMCNPXで解析したところ,実測値とよい一致をしたことから,この種の遮へい設計にはモンテカルロ計算コードが極めて有用であることが示された。